はじめに
圏論が数学のみならず幅広い自然科学の分野で利用されるに従って、これから専門的に圏論を学習したいという人がますます増えてくると予想されます。
また Haskell 等の関数型言語を勉強する中で、圏論について専門的に勉強するまではいかないけどどのような学問なのか知っておきたい、という人もいるでしょう。
以前は圏論について知ろうと思うと初見殺しとして有名な 圏論の基礎 や英語の専門書しか利用できなかったのですが、最近では圏論について日本語で読める書籍が揃ってきました。
また、教科書的なものに限らず読み物的な書籍も幾つか出版されています。
現状でも圏論について書かれた書籍はたくさんあると思います。また、ネット上にもたくさんの圏論に関する解説ブログや資料があります。それらを全て読んで紹介することは不可能なので、ここでは以下のような基準 (必ずしも厳密ではない) を設けた上で、私の独断で入門書・入門資料として適切と思われるものを選択してみました。
- 圏論への入門を意図して書かれたものであること
- 内容にある程度以上の信頼性があること
- ロジックやトポロジー等の数学の専門分野の知識を前提とせず、圏論そのものを主題としているもの
初めはリストアップするだけになりますが、ここで紹介している書籍や資料に関しては詳しく読んだ上で書評を随時アップデートしていきます。
このまとめが、これから圏論に入門しようとしている人のよい道標になれば幸いです。
読み物
- 作者: 圏論の歩き方委員会
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2015/09/09
- メディア: 単行本
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- 作者: ユージニアチェン,Eugenia Cheng,上原ゆうこ
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2016/02/18
- メディア: 単行本
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専門書籍
Conceptual Mathematics: A First Introduction to Categories
- 作者: F. William Lawvere,Stephen H. Schanuel
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2013/09/02
- メディア: Kindle版
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ただし後半にいくほどに出てくる圏論の概念自体が難しくなっていくので、学習曲線が急になり次第に理解できなくなっていくと思います。Part Ⅳ あたりまで読んだら次の Awodey 本などに移行してもっと厳密な数学の証明スタイルに馴染んでいく必要があると思います。
一方で数学の素養がある人にとっては、ほとんど自明な話が延々と続いてやっと面白いと思う事柄が出てきたら終了するという感じになって物足りなさを感じると思います。流し読みするくらいの感じでいいと思います。
Category Theory (Oxford Logic Guides)
- 作者: Steve Awodey
- 出版社/メーカー: Oxford University Press, U.S.A.
- 発売日: 2010/08/13
- メディア: ペーパーバック
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- 作者: スティーブアウディ,Steve Awodey,前原和寿
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 2015/09/19
- メディア: 単行本
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2017 年 1 月 29 日に下の ベーシック圏論 普遍性からの速習コース が発売されました。
数学の素養を持たない人でも読めるようにと書かれていますが、集合論や位相論の知識は前提としていると思われます。ラムダ計算やロジックの例がたくさん出てくることから、計算機科学や論理学の知識があるとより読みやすいでしょう。
内容は定義、例、定理、証明という数学の専門書のスタイルで書かれています。証明は厳密で埋めないといけない行間はあまりないです。ですが、数学の素養がないとやはり証明を理解するのも難しいと思うので、私のこちらの記事などを参照して自分がこの本を読む準備ができているか確認してみてください。
- 作者: Tom Leinster,斎藤恭司,土岡俊介
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2017/01/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Basic Category Theory (Cambridge Studies in Advanced Mathematics)
- 作者: Tom Leinster
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2014/08/07
- メディア: Kindle版
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Category Theory for Computing Science (Prentice-hall International Series in Computer Science)
- 作者: Michael Barr,Charles Wells
- 出版社/メーカー: Prentice Hall
- 発売日: 1995/10/01
- メディア: ペーパーバック
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目次の内容からはそこまで計算機科学に特化しているようには見えません。
PDF が以下で配布されています。
http://www.math.mcgill.ca/triples/Barr-Wells-ctcs.pdf
Category Theory for the Sciences (MIT Press)
- 作者: David I. Spivak
- 出版社/メーカー: The MIT Press
- 発売日: 2014/10/17
- メディア: Kindle版
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関手データモデルについては詳しく勉強したいのですが、圏論の入門書としては少し物足りない感じがします。
この書籍は無料で PDF 版が以下で配布されています。
http://math.mit.edu/~dspivak/teaching/sp13/CT4S.pdf
より専門的な内容のもの
圏論の勉強をしていて分からないことがあったら一番最初に参照するサイトです。
ただし現在の圏論の最先端の知識を用いて極めて一般的、抽象的に定義などが書かれているため、検索でたどり着いたもののこれじゃない感を感じることがよくあります。
このサイトの記述、内容が理解できるようになったらその時点でかなりの圏論マスターじゃないかと思います。私はほとんど理解できません。
Category Theory in Context (Aurora: Dover Modern Math Originals)
- 作者: Emily Riehl
- 出版社/メーカー: Dover Publications
- 発売日: 2016/11/16
- メディア: ペーパーバック
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PDF が以下で配布されています。
http://www.math.jhu.edu/~eriehl/context.pdf
Categories for the Working Mathematician (Graduate Texts in Mathematics)
- 作者: Saunders Mac Lane
- 出版社/メーカー: Springer
- 発売日: 2013/04/17
- メディア: Kindle版
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- 作者: S.マックレーン,Saunders MacLane,三好博之,高木理
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2012/07/17
- メディア: 単行本
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私が数学を勉強する前にこの本を読んだ時の絶望感は半端じゃありませんでした。数学の素養がない状態では間違ってもこの本で圏論に入門しようなどとは思わない方がいいと思います。
ですがこれから圏論を専門的に研究したり、利用していこうと思うのであれば、Awodey 本の内容では物足りなくて、この本を読んでやっと圏論の基礎を身につけたという段階のようです。
頑張って読みましょう。私も読みます。
Toposes, Triples and Theories (Grundlehren der mathematischen Wissenschaften)
- 作者: M. Barr,C. Wells
- 出版社/メーカー: Springer
- 発売日: 2013/12/31
- メディア: ペーパーバック
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PDF が以下で配布されています。
http://www.tac.mta.ca/tac/reprints/articles/12/tr12.pdf
- 作者: Francis Borceux
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 1994/08/26
- メディア: Kindle版
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- 作者: Francis Borceux
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 1994/11/03
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- 作者: Francis Borceux
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 1994/12/08
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Topos の話題が多いので数理論理学の人向けでしょうか。
終わりに
現在数学の素養が全くない状態でこれから圏論を専門的に勉強していきたいと考えている人が、いきなり圏論の勉強を始めても全く理解できないと思います。
そのような人が数学の何から勉強すればいいのか、どのような順序で勉強をすれば最短で圏論が理解できるようになるのかは以下の記事が参考になると思います。
www.orecoli.com
そんなに1から勉強している余裕はなくてとにかく圏論の書籍を読み始めたいという人には以下の記事が参考になると思います。
上で紹介した Awodey 本の副読本的な内容で書籍で省略されている証明や練習問題を中心に詳細な証明をしています。
www.orecoli.com
ここに挙げたものが全てではないですし、もっといいと思うものがあればコメント欄で教えて頂けると嬉しいです。