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圏論の入門書籍・入門資料まとめ

はじめに

圏論が数学のみならず幅広い自然科学の分野で利用されるに従って、これから専門的に圏論を学習したいという人がますます増えてくると予想されます。
また Haskell 等の関数型言語を勉強する中で、圏論について専門的に勉強するまではいかないけどどのような学問なのか知っておきたい、という人もいるでしょう。
以前は圏論について知ろうと思うと初見殺しとして有名な 圏論の基礎 や英語の専門書しか利用できなかったのですが、最近では圏論について日本語で読める書籍が揃ってきました。
また、教科書的なものに限らず読み物的な書籍も幾つか出版されています。

現状でも圏論について書かれた書籍はたくさんあると思います。また、ネット上にもたくさんの圏論に関する解説ブログや資料があります。それらを全て読んで紹介することは不可能なので、ここでは以下のような基準 (必ずしも厳密ではない) を設けた上で、私の独断で入門書・入門資料として適切と思われるものを選択してみました。

  • 圏論への入門を意図して書かれたものであること
  • 内容にある程度以上の信頼性があること
  • ロジックやトポロジー等の数学の専門分野の知識を前提とせず、圏論そのものを主題としているもの

初めはリストアップするだけになりますが、ここで紹介している書籍や資料に関しては詳しく読んだ上で書評を随時アップデートしていきます。

このまとめが、これから圏論に入門しようとしている人のよい道標になれば幸いです。

読み物

圏論の歩き方

圏論の歩き方

今読んでいます。読み次第書評を書きます。

数学教室 πの焼き方: 日常生活の数学的思考

数学教室 πの焼き方: 日常生活の数学的思考

専門書籍

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この本は本当に数学の素養が一切ない人向けに書かれた圏論の入門書です。数学の素養がなくても理解できる例を導入することから始まり、圏論の基本的な概念の導入まで書かれています。
ただし後半にいくほどに出てくる圏論の概念自体が難しくなっていくので、学習曲線が急になり次第に理解できなくなっていくと思います。Part Ⅳ あたりまで読んだら次の Awodey 本などに移行してもっと厳密な数学の証明スタイルに馴染んでいく必要があると思います。
一方で数学の素養がある人にとっては、ほとんど自明な話が延々と続いてやっと面白いと思う事柄が出てきたら終了するという感じになって物足りなさを感じると思います。流し読みするくらいの感じでいいと思います。


Category Theory (Oxford Logic Guides)

Category Theory (Oxford Logic Guides)

圏論 原著第2版

圏論 原著第2版

入門書の中では日本語で読める唯一の書籍です。
2017 年 1 月 29 日に下の ベーシック圏論 普遍性からの速習コース が発売されました。
数学の素養を持たない人でも読めるようにと書かれていますが、集合論や位相論の知識は前提としていると思われます。ラムダ計算やロジックの例がたくさん出てくることから、計算機科学や論理学の知識があるとより読みやすいでしょう。
内容は定義、例、定理、証明という数学の専門書のスタイルで書かれています。証明は厳密で埋めないといけない行間はあまりないです。ですが、数学の素養がないとやはり証明を理解するのも難しいと思うので、私のこちらの記事などを参照して自分がこの本を読む準備ができているか確認してみてください。

ベーシック圏論 普遍性からの速習コース

ベーシック圏論 普遍性からの速習コース

Basic Category Theory (Cambridge Studies in Advanced Mathematics)

Basic Category Theory (Cambridge Studies in Advanced Mathematics)

すでに数学の素養があるのであれば、Awodey 本よりこちらの方がおすすめだという人もいます。私は詳しく読んでいないので、読んだら感想を追記します。


Category Theory for Computing Science (Prentice-Hall International Series in Computer Science)

Category Theory for Computing Science (Prentice-Hall International Series in Computer Science)

こちらも入門書としての評価は高いです。Fibration や Topos に章が割かれておりここまで紹介した書籍の中では一番専門的な内容になっていると思います。
目次の内容からはそこまで計算機科学に特化しているようには見えません。
PDF が以下で配布されています。
http://www.math.mcgill.ca/triples/Barr-Wells-ctcs.pdf


Category Theory for the Sciences (MIT Press)

Category Theory for the Sciences (MIT Press)

最近話題の関手データモデルの考案者 David Spivak による圏論の入門書です。Chapter 5 で関手データモデルも紹介されています。
関手データモデルについては詳しく勉強したいのですが、圏論の入門書としては少し物足りない感じがします。
この書籍は無料で PDF 版が以下で配布されています。
http://math.mit.edu/~dspivak/teaching/sp13/CT4S.pdf

より専門的な内容のもの

圏論の勉強をしていて分からないことがあったら一番最初に参照するサイトです。
ただし現在の圏論の最先端の知識を用いて極めて一般的、抽象的に定義などが書かれているため、検索でたどり着いたもののこれじゃない感を感じることがよくあります。
このサイトの記述、内容が理解できるようになったらその時点でかなりの圏論マスターじゃないかと思います。私はほとんど理解できません。


Category Theory in Context (Aurora: Dover Modern Math Originals)

Category Theory in Context (Aurora: Dover Modern Math Originals)

Chapter 6 のタイトルが All Concepts are Kan Extensions とあるので圏論の基礎と同程度の内容かと思います。ページ数が少なめで簡潔な記述になっています。すでに数学の素養のある人向けだと思います。
PDF が以下で配布されています。
http://www.math.jhu.edu/~eriehl/context.pdf


Categories for the Working Mathematician (Graduate Texts in Mathematics)

Categories for the Working Mathematician (Graduate Texts in Mathematics)

圏論の基礎

圏論の基礎

Awodey 本を読んだ後、あるいはホモロジー代数などを勉強したあとなら普通に読めるようです。私はまだ読んでませんが、読める気がします。
私が数学を勉強する前にこの本を読んだ時の絶望感は半端じゃありませんでした。数学の素養がない状態では間違ってもこの本で圏論に入門しようなどとは思わない方がいいと思います。
ですがこれから圏論を専門的に研究したり、利用していこうと思うのであれば、Awodey 本の内容では物足りなくて、この本を読んでやっと圏論の基礎を身につけたという段階のようです。
頑張って読みましょう。私も読みます。


Toposes, Triples and Theories (Grundlehren der mathematischen Wissenschaften)

Toposes, Triples and Theories (Grundlehren der mathematischen Wissenschaften)

上で紹介した Category Theory for Computing Science (Prentice-Hall International Series in Computer Science) の著者らによる書籍です。タイトルにある Triples というのはモナドのことです。
PDF が以下で配布されています。
http://www.tac.mta.ca/tac/reprints/articles/12/tr12.pdf


Handbook of Categorical Algebra: Volume 1, Basic Category Theory: 001 (Encyclopedia of Mathematics and its Applications)

Handbook of Categorical Algebra: Volume 1, Basic Category Theory: 001 (Encyclopedia of Mathematics and its Applications)

Handbook of Categorical Algebra: Volume 3, Sheaf Theory: 003 (Encyclopedia of Mathematics and its Applications)

Handbook of Categorical Algebra: Volume 3, Sheaf Theory: 003 (Encyclopedia of Mathematics and its Applications)

twitter 上で圏論初心者を圏論上級者が殴る際に使われる武器。
Topos の話題が多いので数理論理学の人向けでしょうか。

終わりに

現在数学の素養が全くない状態でこれから圏論を専門的に勉強していきたいと考えている人が、いきなり圏論の勉強を始めても全く理解できないと思います。
そのような人が数学の何から勉強すればいいのか、どのような順序で勉強をすれば最短で圏論が理解できるようになるのかは以下の記事が参考になると思います。
www.orecoli.com

そんなに1から勉強している余裕はなくてとにかく圏論の書籍を読み始めたいという人には以下の記事が参考になると思います。
上で紹介した Awodey 本の副読本的な内容で書籍で省略されている証明や練習問題を中心に詳細な証明をしています。
www.orecoli.com


ここに挙げたものが全てではないですし、もっといいと思うものがあればコメント欄で教えて頂けると嬉しいです。